【実話】『オンリー・ザ・ブレイブ』の元になった事件と防火テントの効果

日本ではそこまで頻発しない森林火災は、アメリカ西部では激しい干ばつにより大きな問題になっています。

そこで森林火災にフォーカスし、実際に起きた事件を元に作られた映画が『オンリー・ザ・ブレイブ』です。

『オンリー・ザ・ブレイブ』は2013年に起きた巨大山火事の「ヤーネルヒル火災」という、アリゾナ州ヤーネルヒル近辺で起きた事件に基づいた映画。

今回は『オンリー・ザ・ブレイブ』のストーリーを解説しながら、「ヤーネルヒル火災」とその後についてより深掘りしていきます。

『オンリー・ザ・ブレイブ』のあらすじを振り返る

まずは『オンリー・ザ・ブレイブ』がどんなストーリーだったのか振り返ってみます。

エリック・マシューの願望

本作の主人公の一人、エリック・マシューは自身が隊長を務める森林消火チームを、国が認定する正式なホットショット隊に認められることが彼の強い願いでした。

そして何年にもわたる訓練と実績を積み重ね、2008年に正式に国から正式なホットショット隊として認められるのです。

ホットショット隊とは農務省森林局の特殊チームを指す言葉で、地方自治体だった彼のチームが国に認められたのは実はとんでもない偉業なのです。

本作はその偉業を達成するまでの道のりと、認められてから2013年に「ヤーネルヒル火災」が起こるまでを描いた作品になります。

ブレンダン・マクドナウという人物

ブレンダン・マクドナウはエリック・マシューのホットショット隊に入隊した隊員の一人です。

しかし彼の入隊前の経歴は誉められるものではなく、薬物や窃盗の犯罪を犯し、彼女のナタリーを妊娠させて責任をとらずにいました。

そんな無責任なブレンダンはナタリーや親にまで愛想を尽かされますが、そこで過ちに気づき更生の道を歩み始めます。

そこで就職先としてホットショット隊に入隊するのですが、厳しい訓練や過酷な現場は彼の想像を超えていました。

紆余曲折がありながら、彼はホットショット隊に認められ、ナタリーとの仲も回復するようになっていきます。

ここから先は大きなネタバレを含みますので、未鑑賞の方でネタバレを避けたい方は飛ばしてください。

正式にホットショット隊として認められたその後

2008年にエリック・マシューの隊が国から認められ、「グラニット・マウンテン・ホットショット」という名前を彼らは隊に命名しました。

彼らはいくつもの山火事を鎮火しましたが、歴史的なネズの木を守った功績は特に印象的です。

歴史のあるネズの木のある山火事を鎮火し、彼は大いに喜びネズの木の前で組み体操をして写真を撮ります。

この写真が後に強く胸を打つ写真になるとは、この時点では思わなかったですね。

その後、ブレンダンがガラガラ蛇に噛まれ、娘のために町の消防隊に異動を希望して一悶着あったり、エリックが妻といろいろあったりしてヤーネルヒル火災の日に場面は移っていきます。

ヤーネルヒル火災当日の出来事

そして2013年のヤーネル近辺での山火事への消火活動にストーリーは移っていきます。

映画を見た人ならわかるかと思いますが、ホットショット隊の消火方法は”火をもって火を制す”のですよ。

向かってくる火に対して、反対側から迎え火を入れることで燃焼をそれ以上広げないという消火方法です。

ヤーネルでも消火方法で迎え火を炊きますが、あろうことか航空消防隊の散水飛行艇によってその火を消火されてしまうわけです。

上空からじゃ迎え火だろうとなんだろうと”火は火”なので、航空消防隊を責めることもできないのですが。

それは置いといて、迎え火の作戦は失敗したエリック達は場所を変えるため、ブレンダンが見張り役となり部隊と別行動になります。

その後ブレンダンの見張り場所として選ばれた高台が、風の影響で火が回ってしまったため別の消火隊によって救出されます。

エリックたちは火災を止めるため、移動を開始。

しかし、火の勢いが想像よりずっと早く、隊員が準備を終える前に強大な自然の猛威が彼らを襲うことになります。

ブレンダンを除く19名の隊員は死亡、隊員の家族には「19名死亡、隊の中で一人だけ生存者がいる」と連絡されるのです。

隊員の家族を集めた説明会が開かれ、一縷の希望を持った家族が集合、事情を知らないブレンダンが会場に到着。

そこで生存者一名は自分の家族ではないことを知った家族は悲しみ絶望、ブレンダンも生き残ってしまったことに絶望してしまいます。

そこで画面は暗転し、3年後の物語へと切り替わるのです。

『オンリー・ザ・ブレイブ』のその後とヤーネルヒル火災の解説

ここ からは映画でも少し描かれていたヤーネルヒル火災のその後と、事件の解説をしていきます。

オンリー・ザ・ブレイブのその後

ヤーネルヒル火災のその後は、ブレンダンが少し大きくなった娘を連れてピラミッドをつくった木の下に弔いに行きます。

3年が経っておりブレンダンはあの時の悲しみを乗り越え、娘と幸せに暮らしているのがわかる上手な描写ですね。

ブレンダンは後にこのように語っています。

生き残った罪悪感より、仲間と出会えたことを今は誇りに思う。彼らはヒーローだ。”ブレンダン・マクドナウ”

オンリー・ザ・ブレイブ日本語訳版より抜粋

命尽きるまで山火事と戦った仲間を誇りに思う、 ホットショット隊に入る前のブレンダンからは想像もつかない成長にうるっときちゃいますね。

そしてエリックの妻・アマンダを演じたジェニファー・コネリーは実際にアマンダ本人と過ごし、エリックを教えてくれたそうです。

ジェニファー・コネリーが劇中で履いていたカウボーイブーツは、なんとアマンダ本人のものだそうです。

ヤーネルヒル火災の解説

ここからはヤーネルヒル火災の解説をしていきます。

2013年6月28日に落雷により発生したアメリカ史上最悪と言われる山火事です。

映画にも登場した19名の隊員が犠牲になり、消防士19名が命を落とした山火事では過去80年で最も多い惨事となっています。

この悲劇の原因は、急激な天候の変化や無線の通信不良などが挙げられ、また避難経路を取り囲む地形の影響で視界が遮られていたことも原因とされています。

またアメリカ西部では長期的な干ばつが問題視されており、当時の気温が38度だったことも影響しているとされています。

消火に向かったは判断ミスだったのか

エリック達は安全圏で待機中で、消火に向かわなければ命を落とすこともありませんでした。

エリック達が消火に向かったのは判断ミスだったのでしょうか?

私は判断ミスではないと思います。

エリック達が消火に向かった時の天候は、まだ消火が間に合うと判断できるものでした。

さらに消火作業をしなければ、もっと広い範囲に燃焼が広がってしまうため、彼らは責務を全うしようとしたのです。

しかし、風向きが変わり、時速35kmという突風が彼らに向かって吹き始めました。

火に囲まれたエリック達は防火テントに入り、火が通り過ぎるのを待ったのです。

防火テントの効果

防火テントはほとんど燃えない素材でできており、衣服が燃焼しないように身を守ることができます。

本作でも何度も防火テントに入る訓練をしており、いざという時に備える準備はできていました。

しかし防火テントは燃焼から身を守ることはできても、熱から身を守ることはできません。

隊員達を襲った熱は1,090度にのぼっていたとされており、そんな高温の中では逃げることも生存することもできなかったのです。

まとめ

今回は『オンリー・ザ・ブレイブ』のストーリーと、元になったヤーネルヒル火災について解説してきました。

本作は報われないラストを迎えますが、事実はいつもハッピーエンドとは限らないものです。

過去80年でもっとも多くの消防隊員が亡くなった事件を忘れないためにも、映像作品として語り継がれてほしいですね。

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